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「手紙」 [読書感想文]

 やっぱりおもしろい!
 今年も、彼にはまりそうな予感の東野圭吾氏。

 どうしてこんな文章が書けるのでしょうか!?
 読む前から相当の期待をして読んでいるのですが、それでも読後にはため息とともに、
 「は〜。おもしろい。なんなの!? 天才なの!?」と。

 今回は事件そのものが本題じゃなくて。
 事件を起こした人の家族のはなし。
 それでもおもしろいのは、やっぱり天才なの!?

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫







 これはなんといったらいいのか。

 

 サスペンスでもなければミステリーでもないと思うんだけど。

 

 最初に殺人事件は起こるけど、犯人は主人公ではないし

この事件の後、この事件によって人生が狂って行く犯罪者の弟の話。

 

 サスペンスと言えばサスペンスかもしれない。

 彼が殺人者の弟だとわかった瞬間からの、彼に対する人々の態度は。

 

 差別はダメだとわかっている人も、それは自分から遠いところでの場合のみ。

 かわいそうだとは思っていても、自分のすぐそばには来て欲しくない。

 そうすることで自分の人生までもが狂ってしまうかもしれない恐怖に襲われるから。

 

 でも理不尽極まりないことには、変わりはない。

 だって、彼(弟)はなにもしていない。

 殺人を犯したのは、彼の兄であって彼ではない。

 よって責められるべきは、拘置所の兄であって弟の彼ではない。

 

 それでも人々の向ける目は、態度はどうしようもない。

 

 これも兄が受けるべき罰の一部。

 そして、罪の一部。

 自分の一瞬の判断ミス、気の迷い、なんであっても起こしてしまったことへの罪であり、罰。

 どんな理由であっても殺人はしてはいけないが、それでも弟のために起こしたのであればなおさら、この罪と罰は兄にはことさら重いことだろう。

 

 そう、「手紙なんて出してはいけなかった」くらいに。

 

 果たして自分が同じ立場に立ったとき、どうするだろうか?

 遠くで起こっていることに対しては、差別はいけない、弟には関係ないと言いつつも、そういう人が目の前に現れたときにも、果たして同じことが言えるだろうか?

 

 ものすごく考えさせられる。

 

 解説によれば、世界平和を歌うヨーコであっても、当事者になった時には理性を保つことは無理だったとか…。

 

 高らかに掲げる理想もない、平凡な私が当事者になったとき。

 どうなるのか。

 

 答えは出ない。

 今はただ、そうならないことを祈るしかできない。



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