「花を捨てる女」 [読書感想文]
「花を捨てる女」
タイトルを見たときから、なんか知ってる気がするな〜とは思っていたのだが。
読み進めて行くと、やはりところどころ知っている。
でも全く同じではないし、どこかが決定的に違っている。
それもそのはず。
私が見たのは、テレビドラマ「霞夕子シリーズ」の一つとしてだった。
原作の警察役がそのまま霞検事になっていたのだった。
でも全くそのままとう訳ではなかったが、ドラマとでは結論違っていた。
やはりドラマのほうがよりドラマチック(?)になるようなクライマックスに。
霞夕子シリーズの法則どおり、最後は犯人が猛省するように変更されていた。
そう、ドラマでは殺人の被害者が「2人」だったのだ。
「2人」と呼ぶかどうかは、微妙なところだが、この台詞で確か犯人は号泣していた。
原作が違うのに、霞夕子シリーズに使っちゃうのってずるいな〜。
「アイデンティティ」
嘘をついているつもりが、実は嘘をつかされていた。
短編だからこその物足りなさがよかったんだと思う。
彼女は本当に「直子」なのか?
どっちが嘘をついているのか?
どっちが本当のことを言っているのか?
ひっかかるのが、最後まで「直子」に付点がふってあること。
これがあるせいで、やはりっどっちが本当なのかがわからない。
でも旦那さんが嘘をつく理由が書いてないし。
どっちが真実ですか?
「尽くす女」
彼女がどうして尽くすのか。
もちろん旦那さんを殺すことが最終目的で、それのために死亡診断書が欲しかったんだろうけど、でも本当に尽くすことが好きだっていうところが、滑稽でおもしろかった。
殺したい理由も、尽くせないからだし。
旦那殺しに必要とはいえ、実際にある男性には尽くしていて、彼は本心からの感謝をしていただろうし。
でもやっぱり間違っていた。
だからこそ矛盾が起こり、そして露見する。
どんな理由があっても悪いことはしちゃいけないし、そうそう完成するものではないということかな。
「家族写真」
早々に真犯人がわかっちゃった。
それでも、奥さんが犯人だと思っていた女性を殺さなかったあたりは、予想外でおもしろかった。
あそこで彼女は女性を殺し、手引きをした父親が裏切って警察を呼ぶというような展開を予想していたら、そうならなくて拍子抜け。
そしてあっけなく、真犯人つかまる。
短編じゃなくてこれが長編だったらきっと違う結末になっていたと思いたい。
ってことは、やはり短編であるこの作品は、この結末で正しいのか!?
「三通の遺書」
アイデンティティをより複雑にした感じ。
こっちのほうが面白かったけど。
だましにだまして、だまされて。
死の間際まで必至に考えたストーリー。
でも結局は、旦那さんの人間性にかけた。
彼に裏切られていたことが事の発端だったのに、死んだ後も彼を奪われまいと願い、そして彼の人間性を信じた。
死を目前にした女性は強くて、怖い。
「線と点」
もちろん「点と線」から取ったタイトルだろう。
ものすごく短いストーリー。
アリバイトリックもあまりにもはかなく、偶然によりあっさりと崩れる。
それでもこのショートショートはアリだ。
ただ、最後の台詞。
「昔から“点と線”は付きものじゃないか」
はよくわからない。
「点と線」を読んだ事がないからわからないのかな〜。
いわゆる、点がアリバイ(線)を壊す偶然ってことなの?
私にしては珍しく、どれも短めにしてみました。
短編集ってこともあって。
やっぱり私は長編が好きだな〜。
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